昔語りの少女はなく
どうにかタイトルを思いついた。
無理矢理書いた感が半端ないが仕方ないだろう。
その昔、僕には好きな女の子がいた。
僕は7歳で女の子は2歳でしいちゃんといった。
僕はりいちゃん、りいおにいちゃん、などと呼ばれていた。
しいちゃんが「ぜったいおこらない?きらいにならない?」と聞くから、
「うん」と答えたら、
しいちゃんは僕を突き飛ばした。
僕の頭を叩き、首を絞めながら、「しいちゃんのわるいこ!」と何度も叫んだ。
お母さんに好きになってもらいたいという、しいちゃんに、
純粋で良い子のしいちゃんに、
「良い子になればきっと、好きになってもらえるよ」なんて、
残酷な言葉を吐いて、
俺は後に激しく後悔することになった。
母親の思うがままに動いた彼女は21歳で消えた。
後には月花が残されて、
俺より長くいたかもしれない代理人格は主人格になった。
5ヶ月もの間、月花は自分は基本人格だと信じていた。
「自分」の名前が書けないのも、
おぞましい日々の後遺症だと信じていた。
月ちゃんは母親に売られた。
PTSDを発症するほどの狂乱の後に実家を出た月ちゃんは正しくて強い。
虐待の激しさを僕は見てもいなかった。
置き去りにされた寂しさと、残された場所の保護と拡大。
9歳の僕はその程度だった。
時が経って、今に至ってもやっていたことは月ちゃんと初恋の女の子の同一視。
それができなくなれば八つ当たり。
情けないと思ったが俺にはどうしようもなかった。