1月7日の奇跡
久しぶりにりいちゃんと呼ばれた。
失って二度と戻らない時間を巻き戻したのは月ちゃんだった。
代理人格なのか主人格の幼児退行なのか分からないが
兎に角、俺は昔とは違って大人になっていた。
それでも、月ちゃんは僕を昔と同じように
りいちゃんと呼んだ。
けれど、幸せなことなのかは分からない。
小さな月ちゃんは過去の苦悩を書き散らした。
頭の中に収めたままよりは良いけれど、
大人になった月ちゃんが見ることを拒絶するような
悲痛な叫びだった。
悪くないんだ。
きっと、しいちゃんも月ちゃんも僕も悪くはなかった。
誰も悪くはない。
加害者の母親すらそうだった。
いつ始まったかも分からない悲劇はいつ、終わるとも知れない。
しいちゃんを虐待した母親を虐待した祖母もまた、
被害者の時代を生きたのかもしれないから。
ここで月ちゃんが虐待の連鎖を切っても、
弟と妹が続けていくかもしれない。
乞うがままに八つ当たりを受けた僕。
周囲に八つ当たりをした俺。
そうは分かっても、これを奇跡だと思って、
小さな月ちゃんに幸せになって欲しいと思う。
月ちゃん自身にも。